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ガラ..ガラ..
ガンッ
ライアンの瓦礫を拾っては投げる音だけが虚しく響いていた。
「レイドー。」
ライアンが声をかける。
レイドは建物の中央辺りの壁を背もたれに座り、書き上げる小説を昇華させようと考えるように目を閉じていた。
「ここには何もねぇんだろ?」
「・・・・・。」
フゥと諦めの色を含んだため息をつき、ゆっくりと目蓋を開く。
「・・ああ。」
ただそれだけ呟き立ち上がり、
「探索不可能エリアに行くか。」
歩み出した。
コツ..コツ..コツ..タン
「おお・・。ここか。」
地下へと続く階段を降りた二人の目の前には、恐ろしく巨大な鉄の扉があった。
扉の横の装置を見つけたレイドは、携帯のような器具を取り出しそこから伸びたケーブルを装置に繋ぐ。
ピピピ..ピ...ピピ..
「どうだ?レイド。」
ふと、器具を操作するレイドにライアンが話しかけた。
「見えっか?」
ヒュウ...
扉から漏れた風が、二人を擽るように流れる。
「・・・・ああ。」
作業する手を止めず、レイドが続ける。
「1人、いる。」
..ピ..ピピピ.
「化け物にしたら小せぇ。嫌な気もしねぇ・・・」
ピピ..
「恐らくは、・・人だろう。」
「だろう?」
「ああ・・。こんな得体の知れねぇとこだ・・・」
....ピ.
「・・合成獣(キメラ)の可能性は捨てられねぇ。」
ブーーーー!!
「・・いかれてやがる。」
チッと軽く舌打ちしながらケーブルを引き抜く。
「ライアン。」
「おぅ。」
待ってましたとばかりにライアンが扉に手をついた。
「・・出来れば慎重に頼むぞ。」
メギ..
まるで粘土で出来ているかのごとく、ライアンの指が扉にめり込んで、
「・・・よっ。」
ドグシャアアァァ!!
「・・・・慎重にと言ったはずだが・・」
ザァァ...
砂が煙る。
ライアンが警戒してか背の大剣に手をかけた。
「必要ねぇ。」
「?」
「動く気配がねぇよ。」
サァ.....
砂煙りが晴れる。
開かれた部屋はこの建物のようなキューブ型。
全く持って何もない。
中央のイスに座る人影を除けば。
「・・・。」
無言でレイドが近づく。
イスに座るのは、まだあどけない少年のようだ。薄茶色のショートカットと、短パンに深緑のパーカー。
首には赤い首輪。
..チャリ
レイドがその首輪についたタグに手を付ける。
「A・・LL。・・・オール?」
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