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白。
最初の情報は雲より白いそれだった。
次いで、おはようという単語。
三番目は、天井と対照的な黒髪。
(だれ?)
回りきらない頭で考えようとしたけど分からない。
「早速聞きたいことがあるんだが・・」
もう少し考えようとしたら、その人が振り向いた。
鋭い、凜とした顔。
「少年。キミは何者だ?」
「・・・・・え?」
あれ?そういえばボクは誰だっけ?
「え?・・・えっ?あの・・、・・・えっ?」
戸惑っていると、その人の眉がピクリと動いた。
「ああ・・。悪ぃ。」
「レディには野郎から名乗るべきか・・」
小さな、しかし活気あふれる港町。
近代的な建物がそびえ立つ大都会。
それらを隔てる緑濃い山にその施設はあった。
白で統一された施設には様々な形の建物や、広い庭園などが見える。
その中の塔の最上階。
「いい朝だ。」
太陽に光る長い白髪。
黒いズボンとブーツ。
白いシャツの上に黒のベストを羽織った、40代前半のような一人の男が、扉窓から朝日を眺めていた。
「お天道さんを拝むと心が洗われる。」
男は振り返り、ソファーに座る大男に尋ねる。
「爺臭いと思うかね?ライアンくん。」
「いやぁ。俺も雨の日より晴れてた方が気分はいいですぜ?」
背もたれに肘掛けし、横目で男を見ながら応える。
「ハッハッハッハ!それもそうだ!」
返答にひとしきり笑った後。
「ふぅ。さて、ライアンくん。」
イスに腰掛け、手を組む。
「報告をしてくれるかね?」
「俺はレイド・キサラギ。『Team Sincore』二番隊隊長だ。」
「え・・・?」
その人はそれで伝わると思ったみたい。
でも、ボクにはチンプンカンプンで、
「あの・・・。ここは?」
「あ?」
ビクッ
荒い言葉使い。
本能に従い体が震えた。
「ああ、悪ぃな。ここは『Team Sincore』二番隊寮。俺の部屋だ。」
「シン・・・コア?」
って、何?
「ああ。そんなことよりキミはあんなところで何してたんだ?」
「あんな・・・とこ?」
って、どこ?
「そう。それから・・・」
あれ?そういえば・・・
「キミは何だ?」
「・・・あの・・・」
そこで気づいてしまった。
「ここは・・・どこ・・・?」
「あ?だから・・・」
頭が回らないんじゃなくて、はじめから知らなかったんだ。
「あんなとこって・・・どこ?」
「?」
「ボクは・・・」
「・・・だれ?」
「・・・。」
カリカリ..
その人が無言で頭をかく。
「・・参ったな。」
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