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「てめぇ…良い度胸してんじゃねぇか…」
蓮次の言葉は逆効果だったらしく、侍達が刀を振り下ろした。
「ちょっ、まっ…!」
空を斬る音を合図に他の侍達が襲い掛かる。
次々に振り回される刀を紙一重でかわしながら逃げようと下がれば、不意に肩を叩かれた。
「え…?」
咄嗟に振り返ると生真面目そうな顔をした法衣を纏う男がちらりと蓮次を見てから前へ出た。
「妖が出たと話を聞いて赴いてみたが、侍が暴れているだけではないか。一体何をしている?」
「あ、アンタは…!」
ジロリと周囲を睨みつけながら告げる言葉から彼は陰陽師だという事がわかる。
周囲に走る動揺からして相当な地位の者だ。
「何をしていると聞いているのだが?」
「ち…行くぞ!」
陰陽師の睨みに舌打ちした侍は刀をしまい、ゾロゾロと歩き去る。
それを呆然と見送った蓮次は慌てて陰陽師に向き直す。
「助けて頂いて真に感謝するでござる!」
「仕事の邪魔になるから退かしたまでだ。」
そっけなく答える陰陽師を改めて蓮次は見た。
所々にさりげなくあるシンプルな装飾と艶やかで長い黒髪の右側に絡めてある紐と鈴、冷たい印象を受ける切れ長の紫がかった目…それらを見る限りではどこか人離れした感じだった。
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