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ここ日の国は、八百万の神々によってもたらされた幸福と、幾つもの妖によってもたらされた哀しみに包まれていた。
神々は人々と互いに慈しみ
妖は人々と互いに憎み合った。
神と人と妖、日の国はそれらのモノ達によって成り立っている。
しかし、如何なる世にも、それらどのモノにも当て嵌まらないモノが居た。
『桜花ノ化身』
その者、左腕は無し。
その者、振るう刀より桜舞う。
その者、人であって人に非ず。
妖を斬り、人を斬り。羽織にその血を吸わせながらも微笑みを浮かべる姿は、正しくアヤカシそのもの。
しかしそれでいて、神々が与えし神罰の如き平等さ。
その存在は、噂話にしては余りにもある存在感、お伽話にしては余りにも実例のある存在。
日の国全体に流れる化身の噂は、根強く染み渡っていた……。
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