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「ようニィちゃん!いい野菜が採れてるよ~」
「いらっしゃいいらっしゃい!いい魚が大安売りだよー!」
「甘味はいかがですかー?」
ここ、都は様々な活気に満ち溢れている。
そこを上機嫌な青年が一人、興味深げな視線を店の商品にさ迷わせて歩いていた。
「んー!やっぱり桜の季節は活気が増すでござるなぁ~♪」
その青年の容姿は、長く茶色がかった黒の外側に跳ねる髪は上あたりに縛り、そこに桜の花と三日月を摸した髪飾りがとめてある。
額には満月が描かれたバンダナが巻かれ、桜の刺繍が入り、下から上に向かって濃い赤が薄くなっていく色の羽織を身に纏った姿だ。
青年の瞳は桜色で、いかにも桜が好きそうな外見である。
「あの、すいません」
「ん?如何用でござるか?」
そんな少し浮いている青年に声を掛ける女性が居た。
その人は少し控えめな様子で微笑み、口を開く。
「お花見が好きなようですが、夜桜は危険なのでお一人では近付かない方がよろしいですよ」
「む、何故危険なのだ?」
「ここらで最近、妖が出るのです。毎晩、夜桜を見に来る人を襲っているそうで…」
「あいわかった!夜桜には気を付けるでござる」
青年が人好きのする笑みを浮かべながら頷くと、「お花見を楽しんでってくださいね」と微笑みかけながら女性は人混みの中へと消えて行った。
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