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翌日、都は花見の騒ぎとはまた違った騒ぎで慌ただしかった。
「皆忙しそうにしておるが、如何なされたのでござるか?」
他の人よりも遅く目覚めた蓮次は、慌ただしく走り回る人の内一人を呼び止めた。
「あんたは昨日の!それが大変なんだ。どうにも昨夜、噂の『桜花ノ化身』が出たらしいんだよ!」
「なんと!…って、お待ちくだされぇええ!!」
言い終わるや否や全速力で走り去った男をなすすべもなく見送ると、慌ててその後を追い掛ける。
「うお!?ニイちゃん足速いねぇ」
「それほどでもー…いやいや違うでござる!拙者も気になるでござるよぉお!!」
そんなやりとりをしつつとてつもない速さで走り、到着したのは小高い丘にある一本の桜の近くで、人だかりができていた。
「所で…何故その『桜花ノ化身』が出たとわかったのでござるか?」
「ん?お前さん、どこの田舎出身だぁ?」
「奥州でござる~」
「そこは田舎モンじゃねぇって言い返す所だろうに…。まぁいい、説明してやるよ」
のほほんとした表情で素直に答える蓮次に苦笑しながらも、男は説明を始めた。
「『桜花ノ化身に斬られたモノの血は紅色をした桜の花弁となる』って言われてるんだが……桜の木の下にあったのがその紅色の花弁の山だったってわけよ。」
「なるほど…実に面妖な……。」
「そんなに気になるんなら人が居なくなったら見に来るといいよ」
「あいわかったでござる!」
今は人が多すぎて何も見えない。
引き返そうと足を下げた瞬間、誰かとぶつかってしまった。
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