昇君イリュージョン

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僕たちは入り口で待ってる時間を会話で潰していた。 「ねぇ……あの人やっぱり昇君じゃない気がする」 どうやら深雪も違和感を感じたらしい。 「深雪ちゃんもそう思うでしょ!?」 「うん……何て言うか昇君とはタイプが少し違う感じ。ねぇ、昇君って双子なんじゃないの?いくらなんでも他人にしては似すぎよ」 「いやっ……あいつとは小学校から一緒だったけど、双子なんていなかったし、聞いたこともないよ」 「そう…」 謎は深まるばかりだった。 双子ではないとしたらドッペルゲンガーっていうやつだろうか。 その時、入り口から問題の男が出てきた。 ────────来た!! どうしよう?とりあえず話しかけてみようか。 「あ、あの!!」 結構緊張してしまう。 「?」 男は無言でこちらに振り向いた。 それにしてもこういう時は何て言えばいいんだ?義務教育では教えてもらってないぞ。僕は戸惑いながら男に話しかけた。 「あの~……えーっと……昇?あっ、いや…違うんならいいんだけどさ」 世間で言うグダグダな感じになってしまった。あんまり慣れないことはするもんじゃないな。 「………クスッ」 男は薄ら笑いを浮かべると、ゆっくり頷いた。
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