ドM

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「もうすぐ入学か」僕はふと呟いた。桜が咲く道を自転車で走りながら高校のことを考えていた。すると突然ボールが飛んできて僕の腕に直撃した。「う、腕があぁぁ!」ガシャーーーンと大きな音をたたて僕は倒れた。「すみません、お怪我は、ってなんだ秀斗か」「なんだじゃない!大怪我だ!」「悪ぃ。問題ない」こいつは二村大介。同じ中学だった。声が相当低い。「お前にとってはこれが問題ないのか?」倒れた時に手首を捻った。骨折はしていないが。これではボールを投げれない。「ああ、投げられないから、守備練でいい。幸いなことに山口さんもいるしな。地獄のノックを楽しんでこい♪」大介が嫌な笑みを浮かべた。山口さんは近所の大学生で、野球の指導が上手い。それを受けたから3年の最後の大会では全国大会まであと一歩のとこまでいった。でもいくら上手くなれるからって自分から進んでやりたいとは思わない。「なんで地獄なのに楽しまないといけないの!楽しいと思ったらMじゃないか!」「安心しろ。お前はドMだ」「違う!」「…。そういえばさっきの打球」さっきの打球?あぁ、僕の腕を捻ったあれか。「打ったのは薫だ」「…っ!」あの可憐な野球好きの美少女、薫咲さんの打球だと、それなら、「まぁいいか」薫さんの打球なら許すどころか寧ろ嬉しい。「……お前、本当に変態だったんだな」どうやら薫さんのことを考えていたら顔がにやけていたらしく、大介が本気で引いていた。「ぼ、僕は変態だったのか―――っ」悔しくて大声で叫んだ。まさか僕がいくら薫さんの打球とはいえ、打球に当たってにやけていたなんて。するとその声を聞いた人がやってきた。「秀斗どうしたの?」この可憐な声は薫さんだ。綺麗な髪が春風にサラサラと吹かれている。なんて可愛いんだろう。そんなことを考えていたら顔がにやけるのはもちろんのこと鼻血まで出てた。それを見て薫さんが「その鼻血私のせいだよね。私の打球のせいで。ごめんね」と言った。「大丈夫だよ。薫さんの打球のせいじゃないよ」この鼻血は薫さんのせいだが、打球じゃない。僕が彼女を見て興奮しただけだ。「大丈夫?…ちょっと待っててね」薫さんがポケットからティッシュをだし僕の鼻を拭いた。…っ!顔が近い。その気になればキスもできる距離だ。…薫さんとキス?そう思った次の瞬間―――――――――             僕の鼻血が止まらなくなった。
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