第三章

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  ◇ 「愛ちゃんのその宝石はガーネットだろう?」 この前行った喫茶店で、同じ香りを吸いながら千は難しい顔をしていた。 「今、予想するだけで四人はいると俺は思ってる」 「他の……力のある宝石を持っている人が、ですか」 千が力強く頷く。 「力は急に突出すると考えていいだろう」 気を抜かないで、と忠告し、彼は席を立った。 驚いて千を見つめる。 「うちの姫様が良い子にしてるから早く帰るよ」 『姫様』を指すのは舞羽なんだろうということは容易に想像出来た。 彼はとても優しい目で。 「今日は俺が払っておくから」 千はそう言い、テーブルに千円札を置いて喫茶店を出て行った。 なんだか寂しい。 テーブルにお金を見てお釣を返さなきゃ、と思うとなんだか嬉しくなった。
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