第四章

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  ◇ リビングに入ると瑶方がいた。 「ただいま」 「おかえり、彗乃」 ソファに座って新聞を読む瑶方。 タンクトップに半パンという楽な格好をしている。 「シャワーにしたよ」 「うん」 今日は暑い。 湯船に浸かる気にはなれない。 「もう夏休みに入るんでしょ。ゲームばかりしてないでちゃんと宿題しなよ」 「……はーい」 取りかけた小型ゲーム機をテーブルの上に置く俺を見て瑶方は楽しそうに笑った。 結構兄さんは腹黒だ。 「瑶方兄さん、彼方兄さんは?」 「あぁ、もしかしたら泊りになるかも知れないって」 「ふーん……」 瑶方が目だけで俺を見た。 「ねぇ、あの石って彗乃が持ってる?」 背筋が冷えた。 「え……何で?」 「処分しようと思ったらさ、いつの間にかなくなってたから」 遥方は新聞を畳んで、悩むかのように右手を顎に添える。 俺は少し間を置いて口を開いた。 「あー……あのさ」 今日は一度も石を見ていなかったのに、いつの間にかポケットの中に入っていたこと。 ついでに、今日の桃花の様子が変だったことも。 それを全部聞いた瑶方はむぅ、と声を漏らした。 「おかしいね、僕も彗乃が出て行った後で石を見てるんだけど……この石は魔法でも掛かっているのかな」 大まじめな顔で言う瑶方。 彼は何でもいつでも大まじめだ。 「まぁ、いいや。暫くは預かっておくよ」 俺は石を彼に渡す。 石をじぃっと見て遥方は断言した。 「大丈夫。これはウチのだから」 やはり瑶方兄さんには敵わないな。
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