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◇
俺は知らず知らずの間にため息を吐いていた。
ポケットを探るとまたあの石が入っている。
本当に魔法でも掛かっているみたいに俺の側に必ずある。
あれから一週間。
桃花には全く会っていないけれど、今はどうしているだろう。
桃花が変になった日から何事もなく日時は進んでいったけど、あれは一体何だったのだろうか。
想いは何処へも行かなくてひたすら俺自身の中に溜まっていた。
「彗乃、ため息ばっかり吐きなや。幸せ逃げんで」
「え……あぁ、そうだな」
梨依にニコリと笑いかけて、ハンバーガーに齧り付いた。
「あ……」
誰かが俺たちを見て、頭を下げる。
そこにいたのは先日ぶつかったあの女の子。
「あ、ドモ」
「こんにちは」
彼女は一度笑って、首元のペンダントを握り締めた。
「反応してる……」
「はい?」
「貴方たちが……能力者?」
「能力……?」
「何やソレ」
俺たちがそう言うと、彼女の目が更に鋭くなる。
女の子はペンダントから手を離す。
それは赤い石にそっくりだった。
いや姿形は違うが、なんだか雰囲気が似ている。
そして気付いた、ポケットが熱い。
あの石が熱を持っていた。
「もう一度聞くよ。貴方たち、能力者?」
空気が冷たくて重たい。
――殺される。
直感でそう思った。
そうか、これが。
殺意。
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