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◇
俺は梨依を隣に座らせてさっきの椅子に座った。
小さく深呼吸をして、俺は口を開く。
「愛、さん……」
「愛でいいよ」
彼女の乾いた言葉に少しだけ驚いた。
じゃあ、お言葉に甘えて。
「愛、その"能力者"とその宝石って何か関係があるのか?」
「……分からないけど。あたしと君らの持ってる石には、何か秘密があると思う」
コイツ、今……君らって言ったか?
まさか……梨依も石を持ってるのか?
梨依の顔を見たら、俺と同じような表情が俺を見返して来ていた。
俺はポケットに手を突っ込み、それをテーブルの上に放り出す。
からん、と乾いた音がして大きなルビーが転がった。
「……彗乃の、綺麗やな」
梨依は諦めたように笑うと鞄から薄茶色の袋を取り出し、そこから青い石が転がり落ちた。
サファイアだろうか、俺のルビーの一回りは小さい。
「梨依のも綺麗じゃないか」
「そら、おおきに」
俺が持ってる赤の塊とは違い、青色はあるだけで心が落ち着いて来る。
「んで、秘密って何なんよ?」
梨依は未だに警戒したように愛に向き直った。
「ごめん、それも分からない。何かコレで変なことでも起きた?」
「…………!」
愛は桃花のことを知って聞いているのだろうか。
そして何故こんな事を聞きたがるのだろうか。
確かに、コレのせいかと思ったけれど確信があるわけではないし、桃花の具合が偶然悪くなったのかもしれない。
「起きたのね」
愛は小さく、だがハッキリと言った。
俺はルビーを引ったくってズボンのポケットに押し込む。
まだ、それは熱を帯びていた。
「……帰る」
俺はそれだけ言い残して、逃げるようにそこから立ち去る。
梨依が俺を呼んでいるけど、俺は足を止める気にはなれなかった。
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