始まりは雨の日だった

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ミィーン、ミィーン……。 ――ガタン、ガタン。 「ここら辺はでこぼこ道だから、乗り物酔いにならないよう気をつけろよぉ。」 今はちょっと前にお昼を知らせる鐘がなったくらいの時間である。 一台の汚れた軽トラが田んぼと田んぼの間の道を走っていた。 「うげぇ……。じいちゃん、もう手遅れだよ。口の中が酸っぱくなった……。」 軽トラを運転する還暦が懐かしくなったくらい年をとったじいさんの隣で少年が窓から顔を出し、しかめっ面で車に揺られていた。 少年は酔い醒ましにとミントの飴を口に入れるが、ほんの気納め程度にしかならなかった。 「うぇ……そろそろヤバいんだけど。」 少年はミントの飴を必死に口の中で転がすが、どうにも口が酸っぱくて最早ミントの味はしなくなっている。 「大丈夫だ。あと10分くらいで家に着くから、家に着いたら存分に吐くがいいさ。」 じいさんは孫に向けて冗談を言うのだが、少年は胃から込み上げる物と必死に戦っていた。 「じ、じいちゃん車止めてぇ~。」 孫の悲鳴に驚き急ブレーキをかけ軽トラを止める。 が、1分程たった後再び軽トラは進み出した。 軽トラが止まった辺りの田んぼの端に、少し遠慮がちにお好み焼きが浮かんでいた。
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