始まりは雨の日だった

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「ほれ、ここがお前の部屋だ。」 家に来てすぐに昼食を済ませると、慶太は悠三に2階へ連れていかれ、上がってすぐ左にある部屋へと案内された。 「母さんの部屋か……。」 慶太は部屋の中を見渡して呟いた。 何度かこの家を訪れ母親の部屋を見たことはあったが、そこで寝たことはなかった。 畳にして10畳。 慶太の東京にあるマンションの部屋より幾分か広い部屋がそこにはあった。 ベッドはなく、置いてあるのは年期が入った机と黄色く変色した小説やらが並んでいる本棚だけだった。 「適当に掃除しといたから畳はそんなに汚れていないと思う。気になるようだったら自分で掃除しとけ。」 悠三はそれだけ言うと下に降りて行った。 「ふぅ~。」 慶太は悠三が去った後、とりあえず部屋に腰を下ろした。 古めかしい感じとは言え、窓が南を向いているのでいつもは日が入ってくるのだろう。 部屋はジメッとした感じもなく、とても居心地がいいと慶太は感じた。
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