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さっきまで元気だった前原圭一は、元気がなくなっていた。部活メンバーと一緒に戦えることはとても嬉しい。でも、
圭一『・・・なんだろう、この感じ』
圭一は今までにない感覚に犯されていた。
どうしても頭から離れない彼女の事、近くにいるだけで幸せだった。同じ部活をやっていて、少しずつ彼女の事が気になっていた。自分でもよく分からない、この気持ち。
明日の戦いは命懸けの戦いになる。彼女も必然的に危険にさらされる。もしかしたら、ケガではすまないかもしれない。そう考えると胸が張り裂けそうだった。
圭一「はぁー・・・」
圭一は小さくため息を吐いた。するとその時、
梨花「み~、圭一どうかしたのですか?」
梨花ちゃんが話しかけてきた。
圭一「あぁ、梨花ちゃん。今帰るの?」
梨花「そうなのです。沙都子と明日の計画を立てていたのですよ。」
明日の計画、と言う事はトラップである事はすぐに分かった。
梨花「もう遅いですから、一緒に帰ろうなのです。」
圭一「あぁ、そうしようか。」
そして今、2つは古手神社まであと少しという所にいた。
梨花「圭一。1つ聞いておきたいことがあるのです。」
不意に梨花ちゃんが口を開いた。
圭一「ん?何、梨花ちゃん?」
梨花ちゃんは圭一の方に振り返った。
梨花「・・・貴方、魅音の事どう思っているの?」
さっきまでの梨花ちゃんと違い、大人の口調で聞いてきた。しかし、今の圭一にはどうでもよかった。
圭一「え、り、梨花ちゃん、いきなりどうしたの?」
狼狽える圭一を尻目に梨花は話を続けた。
梨花「貴方は迷っている。明日の戦いで魅音が傷ついてしまうのではないか。でも貴方はその思いを伝えられない。明日の戦いが終われば、いつものような関係に戻れる。だから伝える意味はないと。違う?」
図星であった。圭一は何か言おうとした。しかし、梨花がそれを遮った。
梨花「確かに、明日の戦いが終われば、いつものような関係には戻れるわ。でも、魅音はどうなるの?魅音の気持ちをよく考えて。明日の戦いが心配なのは貴方だけじゃない。」
なぜ魅音の名前が出てきたのか、圭一にはよく分からなかった。梨花は最後にこう言った。
梨花「貴方に命をかけて魅音を救う気持ちがあれば、私はそれでいい。命懸けで魅音を助けなさい。」
そう言って梨花は黒い髪をなびかせ石の階段を登って行った。
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