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一瞬、松本が何を言っているのか分からなかった。 それほど驚いたのである。 「男が…痴漢被害に?」 聞こえてきた言葉を、反芻するように言う。 松本は頷いて、 「男が痴漢された、なんて恥ずかしいから、誰にも言わないだろう?それに付け込んで、そういう輩が働くようだ」 近頃は女性が男性に痴漢したりするケースもあるらしく、女性だけでなく男性への痴漢も問題視されている。 樹も男にも痴漢する人がいる、ということは健一郎から聴いたことがあったが、まさかこんな身近で耳にするとは思ってもいなかった。 「健一郎は大丈夫だろうと思うが、お前は気をつけろよ」 「はあ…」 樹が頷くと、松本は満足気に大股で教室を去って行った。 .
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