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樹がハッ、と振り向くと、 「いだだ…っ!は、離せっ!」 と涙目で抵抗している男と、男の腕をギリギリと掴んでいる、鋭い目つきが印象的な赤黒い髪色をした男がいた。 「てめぇ、そんなことして恥ずかしくねぇのか」 「な、何のことだかさっぱり分からないのですがっ!」 しらばっくれるつもりなのか、とぼけるフリをしている。 男の額から、冷や汗が流れ落ちた。 (いさぎの悪い男だな…) 先程までの恐怖はすっかり消え去り、呆れしか残っていなかった。 樹はすぅーっと静かに息を吸うと、 「みなさーん!この人僕に痴漢しましたー!」 と大きな声で叫んだ。 .
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