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「え、痴漢!?あの子、男の子じゃない…?」
「痴漢だって!」
「痴漢とかさいてー!」
周りの人々がざわざわと騒ぎ出した。
皆は痴漢男から退けるように移動し、痴漢男と痴漢男の腕を掴んでいる男と、樹の周りだけ空間が出来た。
「ち、ちがう…!私じゃない…っ!」
痴漢男の否定は批判の声に掻き消され、停車した駅で引きずり降ろされていった。
(気持ち悪かった…)
今更恐怖を思い出し、泣きそうになっていると、助けてくれた男が痴漢男を掴んだまま、こちらを振り向いた。
「お前も来てくれ!」
「え…?あ、はい!」
電車が出発する直前だったので、人込みを掻き分けて慌てて降りる。
閉まるドアの向こうに見えた健一郎に、
(先生には上手く言っといて)
と口パクで伝えると、呼ばれた方へ走った。
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