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「おせーんだよ。早く家出ろって」 「だって…」 樹の目の前に、ぬっと出て来たのは、友達の田代健一郎。 樹とは、同じ高校に通っている。 同じ中学ではなかったのだが、たまたま電車で出会い、それから仲良くなっていった。 『次はー黒田、黒田です』 電車が走り始めた。 ハスキーなのに、それでいて凜として響くような声に、思わず聴き入ってしまう。 (この声は…) 「今日はお前の好きな、柚木さんだぜ」 「やっぱり!?」 樹には、お気に入りの車掌がいる。 それが今日の車掌である、柚木光だ。 .
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