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今まで黙っていた、少し年配の駅員さんが口を開いた。
「どうするって…」
「君は本当は柚木が好きな訳ではないのだろう?」
「はぁ、まぁ…」
樹が好きなのは、柚木の声であって、柚木自身ではない。
さすがに、今日初めて顔を知った人を恋愛対象として好きになることはないだろう。
「なら、柚木に本当のことを言うべきじゃないのか。このままだと、柚木が不憫だ」
「そう…だなあ。私もやはり本当のことを話すべきだと思うぞ」
年配の駅員さんの意見に賛同する人が多く、皆口々に、
「本当のことを言ったほうがいい」
と言った。
「そうですよね…。今日、学校の帰りにでもメール送ってみます」
「あぁ、それがいい!」
それから何分か経った後、ようやく警察が来て、縄で縛られて大人しくなった痴漢男を連れて行った。
樹は事情聴取をされたが、あまり詳しいことは聞かれず、すぐに解放された。
お世話になった駅員さんたちにお礼を言い、学校へ向かった。
現在11時過ぎ。
今だと、三限目の途中くらいのはずだ。
樹は三限目が終わってから教室に入ろうと思い、とりあえず保健室に行くことにした。
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