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季節は十二月の初頭。その部屋には電気ストーブが温風を送り出す音と、年季の入った蛍光灯の耳障りな音が響いていた。
重苦しい、空気。
長机をコの字にくっつけ、数人の女子たちが重苦しい顔を突き合わせていた。皆、神代学園高等学校の制服に身を包んでいる。どうやらこの女子たちは高校生らしい。
が、彼女たちの放っている空気は若輩のそれではなかった。皆が皆、背後に銃口でも突きつけられているような、あるいは世事に長けた老獪な政治屋のような、肌を刺すピリついた空気を放っている。
そのなかで、もっとも上座に座っている少女が重々しい空気を払いのけて口を開いた。部屋に居る者たちは、否、部屋そのものが彼女に注意を傾けるような感覚がそこにはあった。
「私たちの計画は、成功せねばならない。この言葉の意味は分かっているな? 各々方」
少女は居並ぶ面々の顔を順々に眺めながら、低く抑えた声で言った。
部屋中から固い唾を飲み込む音と、深く頷いた際に発生した衣擦れの音が上がった。
少女はその様子を満足そうに眺め、深くゆっくりと頷いた。
「……よろしい。それでは我々が、いや“あなた達”がしなければならないことは、お分かりか?」
上座の少女は炯眼を、自分の右方に座っている少女に向けた。
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