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勢い良く飲んだものの、あまりにも勢いが良すぎてゴホゴホと激しくむせた。
それに、薬の味がおかしい。
前に飲んだ時は……こんな甘くなかった。
「死ぬ事は出来ないって言ったはずだが?」
聞こえるはずのない声に、私は全身をビクリとさせる。
部屋を見渡すと、狭い部屋の隅に先ほどの死神――シャインが立っていた。
シャインは転がった睡眠薬のビンを拾い上げると、私に手渡した。
一瞬触れた手は、氷のように冷たい。
「中身を飴に変えておいて正解だったな、詩堂(しどう)のぞみさん」
泣き顔の仮面を被ったシャインだが、勝ち誇った顔をしている気がする言い方に、私は口をつぐむ。
さっきの事は夢でもなんでもない。
現実なんだと思い知らされた。
シャインは腕を組み、こちらを見ている。
「さっきあんたにいい忘れたことがあって来たんだ」
「……何? いい忘れたことって」
私はシャインの方は見ずに睡眠薬のビンを見つめて答えた。
シャインは一呼吸置き、
「あんたが死にたがっている理由は、“詩堂草次(しどうそうじ)”が関係してるのか?」
と聞いてきた。
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