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ヒュウと、乾いた風が吹く、残暑の厳しい八月。
大きな夕日が背中を照りつけるビルの屋上に、私は立っていた。
暑くて背中がジリジリする。
……もう八月も終わりなのに。
そっと汗を拭い、ぼんやりと辺りを見渡した。
屋上から見渡す景色はとても綺麗で、遠くに見える海も、近くにある森も夕焼け色に染まっている。
太陽の存在感を十分に感じる夕暮れ時。
私は一度目を閉じ、この世で最後に見る景色へ別れを告げて胸くらいの高さのあるフェンスに手を掛けた。
弾みをつけてフェンスによじ登り、フェンスの向こう側――私にとって、死の世界への入り口へ立つ。
そして――、
私は迷いなく地を蹴り、
堕ちて行った――。
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