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……目を開くと、真っ暗な世界。
私は死んだのだろうか?
痛みもなく、ただ暗いだけの世界に横たわっているようだ。
……と思ったら視界に光が差し込んでくる。
さっき見た夕焼けが。
なんで? 私、ビルの上から堕ちた筈なのに!?
ボンヤリと開けた瞳を思い切り見開いた。
『気付いたか』
ヒンヤリと背筋が冷たくなる声色で、誰かが話し掛けてきた。
声のした上を見上げれば、真っ暗な羽根が見える。
な、に?
その羽根が一度バサリと羽ばたく。
真っ暗な衣装、真っ暗な羽根。
顔には目と口の所だけが三日月型に開いた泣き顔のような仮面。
“人間ではない”と、私は直感した。
恐怖のあまり声が出ない。
もう一度、バサリと羽根を上下に動かすと、それはフワリと浮き上がる。
……人間ではない、と改めて確信した。
人間じゃないなら、何?
私の疑問は、問い掛ける前に返された。
『俺は死神のシャインだ。お前が死にそうになっていたから、来た』
思ったよりも若い、男の子の声。
……いや、そんなことより、死神が来た、ということは私は死んだのだろう。
わざわざお迎えに来てくれるんだ、と変に感心して、死神“シャイン”を見ると、シャインは私の頭をガシリと掴んだ。
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