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「ご不満なようだな」
シャインが腕を組み、私を見てくる。
……不満も何も、人としておかしい。
口を開きかけると、シャインはそれを遮った。
「それが出来ないならするな。俺の仕事を増やされて迷惑だ」
……シャインは人の命を取ることに抵抗はないんだろうか?
仕事で片付けられてしまうのは、やはり人ではないから?
恐々見つめると、シャインはまた大きく羽根を動かす。
「自分も他人も変わらない。自分を殺す事が出来るなら人を殺すのはたやすいだろ?」
「た、たやすいわけないでしょ!?」
「お前が女を殺したのを見届けたら、俺がお前を殺してやる。……お前は牢に入れられることも罪に問われる事もない」
バサリと、視界を真っ黒なローブに遮られた。
ローブの中で一瞬光をあてられたようにチカチカした目は、ローブが退けられたあと、先程と同じく、大きな夕焼けを映し出す。
「……一週間だ。一週間のうちに殺してもらおうか。その間、お前は絶対に自ら死ぬことは出来ない」
ヒラヒラ、と目の前に落ちてきたグレーの紙。
顔写真と名前が入ったその紙に私は目を向けた。
やさしそうな笑顔を向ける健康的なその女性。
……なんでこの人を私が殺さなければいけないのか。
「一週間後が楽しみだな」
楽しげにシャインは言って、夕焼けに向かって飛び立って行く。
私は見送った後、グレーの紙を強く握り締めた。
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