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「──…それから先は、文字が掠れて読めんらしい」
「えー!せっかく良いところだったのによー」
ロウ博士に、子供たちは口を尖らし、抗議する。
「し、しかしじゃな…わしはこう考えておる…」
愛くるしいくりくりとした目を閉じた博士に、子供たちは耳を傾ける。
「……誰かを、待っているんじゃよ、…蒼き獣はな」
博士は目を少し開けたが、それは伏せたままにし、自らの掌を見つめる。
相当な年配であるがゆえに、その手には細かな皺がたくさん刻まれている。
ロウ博士は、つるっぱげた頭に、白髪を少し残し、丸い眼鏡をかけた、典型的な、それでいて優しげな博士である。
その性格のせいなのか、くりりとした瞳のせいなのか、ロウ博士は子供たちに大人気なのだ。
今日も、自分の話に一生懸命耳を傾ける子供たちのため、ロウ博士は自分の研究室で、この村、パルナ村に古来から伝わる石碑について教えていた。
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