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「誰かって……誰を?」
聞きなれない声に、子供たちが一斉にその声の主へと振り返る。
驚きの表情を見せる子供もいれば、うんざりしたような、意地の悪い顔を見せる子もいる。
「おお、チャコ。今日は…珍しく来たんじゃなぁ」
ロウ博士は口許に笑みを浮かべる。
博士が笑うたびに、目尻の皺や頬の皺が深くなった。
「今日はたまたま、だ。…来てほしくなかっただろう?」
そう言い、チャコは先程意地の悪い顔を見せた男を睨み付ける。その子供も、負けじとチャコを睨み返す。
「こら、チャコ。そのような事を言ってはいけんぞ」
博士は少し厳しい目をしながら、チャコの細い腕を掴む。
「だって…」
俯きながら、唇を噛み締めるが、出てくるのは血ではなく涙。
「チャコ…」
博士が苦しげに名前を呼ぶと、チャコは肩をびくりと震わす。
そして、博士の弱々しい手を乱暴にほどき、研究室を後にした。
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