序章 想いを綴る

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 ニルが行為を止めた。どうして? 「だからそんな顔するなって」   焦った顔をしながら、ニルが私を見ている。どうやら私はあんまりいい顔をしていなかったみたい。 おかしいな。きちんと笑顔を作っていたのに。   ニルにはわかっちゃんだね。 「やっぱりニルは優しいね。だからニルって好き」   語尾にニルを想う気持ちを一杯一杯いっぱ~いつけて、私は彼の胸の中に飛び込んだ。  ニルは驚いたけど、避けずに受け止めてくれる。けど勢い余って、二人一緒に床に倒れちゃった。  あはは……失敗失敗。  苦笑いを浮かべる私と背中が床にしたたかに打ち付けられてむすっとしているニル。ちょっと気まずい。  こんな私とニルの関係はだいたい八年ぐらい続いている。仲は見ての通り良好。もしかしたら将来、夫婦としているかも……。 そんな私の困った事はただ一つ。実は男だとニルには思われていることだ。 どうしてそうなったかについては、あまり問題ではないだろう。問題なのは八年間寝食を共にした仲なのに、未だに気づいてくれない。
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