彼の住所は雲の上

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「にしてもお前と秋山ってそんな仲良かったっけ?」 「え、いやっ……良い悪い以前の問題、というか……」 他のメンバーと比べると、ほとんどしゃべったりも無かった気がする。 どちらかというと、神崎のどっきりがだーいせーいこーう!となったあの夜だって、南緒はギターの崎本和哉と話が盛り上がり、肝心の亮介はというと確か……南緒の隣の崎本の向こう側辺りで、ジントニック片手に頬杖を付き、ほとんど口も開かずずっと下を向いていた……ような記憶がうっすら。 あの時は、普段テレビや雑誌でニコニコしているけど、根はあまり愛想が良いわけではないのかな……なんて思ったりして。 結局その後も、和哉とは良き友となり、お互い新曲やネタの感想を交換したりとメル友状態だったのだが。 「でもお前、秋山の歌声好きだって言ってたじゃん。そうやって話し掛けりゃ良かったのに」 「……無理ですよ」 sepiaはメジャーデビューをすると共に中高生中心に瞬く間にヒットした人気バンドだ。 デビュー当初は楽曲のクオリティーの高さに加えて、メンバーのルックスの良さも話題となった。 特にヴォーカルの秋山亮介は、音楽業界の中でも屈指のイケメンと呼ばれている―――
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