彼の住所は雲の上

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「言えませんよ、だって……正直言って、未だにピンと来ないんですもん……」 sepiaは、sepiaさんは、1年くらい前にメジャーデビューしたばかりの新人バンド。 今年で芸歴4年目に入ったイーゼルは、芸能界でのキャリアこそ先輩だけれど、年齢は彼らの方が上。 彼らがメジャーデビューしたその今から約1年前。 芸人としてなかなかうまくいかず、伸び悩んでいた時期が南緒にはあった。 そんな時、新人としてデビューしたパワー溢れる彼らの曲を聴いて元気をもらって。 それからずっと、南緒はsepiaのファンだった。 「憧れなんて言葉、簡単に言いたくありませんけど、でも、本当になんかこう、……やっぱり憧れてたんですよ」 神崎がサプライズで紹介してくれたときは、驚きながらももちろん嬉しかった。 でもやっぱり、世界が違いすぎて、和哉と連絡先を交換までしても、―――所詮、そこまでなんだろうな、なんて。 特に、直に至近距離で拝んだ秋山亮介ときたら次元を超えた何かがあったし、たった一度一緒に飲んだだけで、これ以上何か望むなんて……考えるだけで神様に怒られるような気がした。 それなのに。 【無自覚症状】 (よりによってどうして、……こんな、)
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