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「はぁ……あーもう……」
勢い任せに全速力で走って、たどり着いたが資材置き場。
勢い任せというエネルギーが若干切れて、壁に体を預けるなりズルズルと座り込む。
「……何なの一体」
軽い目眩まで覚えて、息を切らしながら悪態をつく。
その際ふと自分の服装が目に入って、更に脱力した。
よりによって仕事がひとつ終わった直後の出来事だったもので。
サイズが微妙に合わず、緩めのジャージ。
まとめていた髪を解いたばかりでボサボサ。
そもそもジャージになったのは水を被ったからだから若干化粧も落ちていた。
「―――……」
「なーおー。南緒~っ」
唖然としてたら名前を呼ばれた。
「まい……」
「こんなとこで何しよん!収録終わったらネタ合わせしよって言いよったじゃん!」
追い掛けてきた相手の言葉にはっとする。
「ごめ……そーだった」
同時に、改めてさっきの出来事に疑問を覚えた。
なんで私なんだろう?と。
「あ、さっき神崎さんが明日の稽古の時間2時からに変更になったって言いよったよ」
「そっか……」
樋泉南緒、23歳。
彼女の仕事は、真面目にふざけて人を笑わせる
女お笑い芸人。
【最大の理由】
(今終えた仕事は、アトラクションに失敗したら水を被る罰ゲーム付きのバラエティー収録でした。)
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