超越せし者達

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「いい加減、退きやがれ!」 語気を荒げるシェスター。 空間を歪ませた直後の急加速を利用し、『ガンダルフ』の攻撃を避けながら斬り捨てていく。 攻撃的な意思だけを乗せ、牙を突き立て様と、ただ襲い掛かる。 死せる同胞を意に介さないその狂気。 恐怖…『テラー』と総称される異形の化け物達の、これが真なる姿か。 回避しながらの応戦。 アリッシュもそれは同じだが、その豪胆な戦いぶりと比べ、シェスターはアリッシュ以上に後退を余儀無くされる。 後方には、術式を形成する為に意識を集中するメイの姿。 これ以上は退がれない。 舌打ちをするシェスターは、白銀の刃を『ガンダルフ』に向ける。 「退かないなら、押し戻すまでだ」 刃の先の空間が、加速時の様に歪む。 それに構わず迫った獣の眼前で、その歪みが消えた。 瞬間、 「ギャン!?」 『ガンダルフ』の巨体が後方に吹き飛ばされた。 シェスターの行使する魔法は、空間歪曲。 境界線を作ればあらゆる物を切断し、歪曲した空間を元に戻した際の反動を利用すれば、自身の移動速度を速めたり、今の様に対象を弾く盾にもなる。 汎用性に豊む、特異な魔法。 それが、彼の会得している魔法の力だった。 シェスターが歪みの盾の使用を、更に2度続けた所で、 「メイ、まだか!?」 焦りながら、後方に問う。
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