超越せし者達

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催促するシェスターには答えず、一拍の間の後にメイが叫ぶ。 「アリッシュ!」 声を掛けたシェスターには視線も向けない。 切迫した状況もそうだが、魔法構築にも集中していたので無理は無いかもしれない。 しかし無視されたシェスターは、若干の疎外感。 それにしても、魔法を構築していたメイが、何故アリッシュを呼ぶのか。 前方に翳された右手の先には、黒い記号や模様に囲まれて浮く、直径30センチ程の漆黒の球体。 禍々しく映り、威圧的な波動を放つその魔法は完成している様に見られるが… 「あああっ!」 アリッシュはサイスブレイドで豪快に横薙ぎし、頭部を失った獣を、後続の獣にぶつけて進路を塞ぐ。 間を置かずに、横移動しつつ下段からの袈裟斬りで、『ガンダルフ』の肩から頭を斬り上げる。 宙に浮いた死骸が、飛び掛かろうとした獣の邪魔をする。 猛然と嵐の如く『ガンダルフ』の体を破壊していくアリッシュは、足止めを徐々に押されながらもこなしていた。 倒した敵の体も利用して、進行を妨害する。 敵の巨躯は脅威的だが、なまじ重厚な為に、敵にとっても障害となっている。 アリッシュの今の立ち回りは、輪を掛けて自身の役割を果たさせていた。
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