超越せし者達

19/19
前へ
/759ページ
次へ
唐突に終結した戦場に、次第にざわつきが生まれ、僅かに動きが見え始める。 切迫した緊迫感から解き放たれ、脱力して地面に身を預ける者、負傷した同僚を気遣う者など様々だ。 「君達が駆け付けてくれたお陰で、命拾いした。  ありがとう、助かったよ」 隊長格の面々が恭しく謝辞を述べる。 「僕達は、自分達の責務を果たしただけです。  どうにか間に合って良かった。  それより、負傷者の治療を。 僕は役に立てないから、少しこの場に残るよ。 メイとシェスターは、治療を手伝ってあげて」 やんわりと微笑を称えながら、アリッシュは早々に促す。 それに2人は異を見せる事無く即座に頷き応じると、駆け出した。 「迅速な采配に感謝します!」 隊長格の男がアリッシュに敬礼すると、慌ただしくなった元戦場の部下達の元に戻って行った。 先の口振りからして、学生らしきアリッシュ達は軍属ではないだろう。 それでも兵達は皆一様に、3人に対し敬意を払う。 彼らにしてみれば、3人の学生は、自分達を救った戦の功労者だ。 立場の差違など、些末な事だった。 アリッシュは周囲に視線を走らせた後、『ガンダルフ』の沸いてきていた林の先を見据える。 そして…その遥か先に、巨大な純白の塔が映る。 その全長は、視界に捉えきれない。 どれだけ上空を仰ぎ見ても、霞んで塔の頂を垣間見る事も叶わない程長大な、天へと続く搭。 それが何なのか、その正体は誰も知らない。 「…この『ガンダルフ』の群れ…いったい、何だったんだろう…?」 アリッシュの疑念は、答えの見えぬままに、周囲の景色に溶け込み、やがては風に吹き去られていった。
/759ページ

最初のコメントを投稿しよう!

254人が本棚に入れています
本棚に追加