責務と意志

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「あら?お2人さん…もう戻って来たの? いくらなんでも早すぎないか?」 学校に到着し、早々に教室に向かいその戸を開けると、室内のどよめきと共に飛んできたのは、担任からの受け取りに困る声。 今は自分達の担任の授業だった様だ。 「先生、それじゃあんまりですよ。 死線からどうにか帰還した生徒に対して、少しぐらい、労いの言葉があってもいいと思います…」 アリッシュは小さな溜め息を洩らし、苦笑を浮かべる。 「ふふ…っ、お前が言うと嫌味に聞こえる」 このクラスの担任である女性教師、フローレイ・ヤナハが妖艶に笑う。 だが、彼女の半ばからかい気味の口調に、席に座る生徒の中で、真面目に賛同する者がいる。 それもその筈。 アリッシュとメイには、掠り傷はおろか、返り血1つ付いていない。 しかも、死地と称した前線から帰還し、そのまま学校に帰ってきたとしか思えない時間帯。 生徒数人の間から、羨望や憧れといったものではなく、妬みや嫉妬が見え隠れする。 「…調子に乗ってんじゃねぇぞ…」 ぼそりと、聞こえる筈の無い声で呟く者さえ居た。
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