超越せし者達

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「ギグァアアアッ!」 大気を震わす異形の咆哮が、木々の乱立する林に轟く。 狂声の主の体長は、およそ3メートル半から4メートル。 尾の長さを含めると、6メートルにもなるその巨駆。 全身が黒色に包まれ、要所に薄紫の模様を持つ獣が、頑強にして逞太な四肢で大地を踏み切り、鋼鉄すら噛み砕きそうな、発達した顎を開口して疾駆した。 踏み締める度に地面が僅かに振動し、陥没する。 それは、外見以上の凶悪さを振り撒いている。 猛然と駆ける獣を瞬間、何かが縦に切り裂いた。 その先に立つセミロングの金髪の少年は、僅かに一瞥したのみで、2つに割れた獣の躯をさして気に止めず、即座に駆け出す。 端整で大人びた長身のその少年には、雄々しい気品が感じられた。 少年だけ見れば、ここが“戦場”である事を忘れてしまう程に、流麗。 だが、周囲の状況は、彼に見惚れるだけの余裕を与えない。 周囲は、国の正規兵に傭兵らしき一団も交えた混戦模様。 彼らが戦うのは、先程の獣の群れ。 体格があまりにも違い過ぎるにも関わらず、よく善戦していた。
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