超越せし者達

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そこへ、メイが飛び込む。 「たぁっ!」 赤く振動する光に包まれた双刃剣を振り、メイは獣の胴を一閃し、着地と同時に刃で薙ぎ、前足と後ろ足を1本ずつ断ち切った。 「『ガンダルフ』の特性も知らないで、あんな魔法使ってんじゃないわよ!  周りよく見なさい!」 早口で捲し立て、メイは早々にアリッシュの後を追う。 諌められた傭兵は、唖然とするも周りに視線を移す。 魔法を扱える者は、主に操作系魔法で地面や岩盤、木々を利用して脅威の獣『ガンダルフ』の足止め、並びに攻撃をしていた。 恐らく『ガンダルフ』には、自身に作用する魔法への耐性があるのだろう。 「…っ!?  なるほど…って! いやいや、俺はこれしか使えねぇんだよ!」 折角の魔術の素養も、満足に扱えない様子。 しかも、その嘆きはメイには届いていなかった。 「はああっ!」 新たに現れた『ガンダルフ』の内、3体を1人で相手取る長身の少年。 白銀の剣の周囲の空間が、仄かに陽炎の如く歪んでいた。 「ゴアアッ!」 僅かな停滞も許さずに襲い掛かる『ガンダルフ』達。 しかし、その鋭爪や牙が、少年の身体を引き裂く事はなかった。 巨体の割に俊敏な『ガンダルフ』の飛び付きを、異常な加速を持って横に回避、隙だらけな首を跳ね落とす。 加速した際、進行方向とは真逆の空間が、僅かに歪んでいた。
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