3 死

98/108
前へ
/629ページ
次へ
それにしては、夕食の支度もしてないし、変だなぁ、と高橋は、部屋の中を見回した。 黒いコートが無かった。 ナオミが、外出する時に着ていく物だ。 どこかへナオミは、出かけたのかも知れない。 高橋は、渋い顔をして冷蔵庫から缶ビールを取り出し、炬燵に入った。 妙に胸騒ぎがした。1口、ゴクリとビールを飲み、不安を消そうと試みた。 高橋は、何気なく令子に視線を当てた。 寝ているように見えた。あまりに可愛いので近寄って覗き込んだ。 令子は、身動きひとつしなかった。変に顔色が蒼白だった。 高橋は、変だな、と思い令子を揺さぶった。 しかし令子の身体は、冷たくて硬直していた。 慌てて令子の胸に耳を当てた。 令子の心臓は、動いていなかった。
/629ページ

最初のコメントを投稿しよう!

693人が本棚に入れています
本棚に追加