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それにしては、夕食の支度もしてないし、変だなぁ、と高橋は、部屋の中を見回した。
黒いコートが無かった。
ナオミが、外出する時に着ていく物だ。
どこかへナオミは、出かけたのかも知れない。
高橋は、渋い顔をして冷蔵庫から缶ビールを取り出し、炬燵に入った。
妙に胸騒ぎがした。1口、ゴクリとビールを飲み、不安を消そうと試みた。
高橋は、何気なく令子に視線を当てた。
寝ているように見えた。あまりに可愛いので近寄って覗き込んだ。
令子は、身動きひとつしなかった。変に顔色が蒼白だった。
高橋は、変だな、と思い令子を揺さぶった。
しかし令子の身体は、冷たくて硬直していた。
慌てて令子の胸に耳を当てた。
令子の心臓は、動いていなかった。
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