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栄一が電話に出たら面倒だが、今は、そんなことを言ってられなかった。
幸い電話に出たのは徳子だった。
高橋は、令子が死んでいることは隠して、ナオミの所在を知らないか、と尋ねた。
徳子は、昼間、訪ねて来たと言い、その時の様子を話してくれた。
その際、無理心中する、なんてことを言われた、と語った。
高橋は、心臓が止まる程、驚いた。
それで令子が死んでいるのか、と思った。
頭をガツンと殴られた気分で電話を切った。
ナオミが、この寒空の下、死に場所を求めて彷徨っている姿が浮かんだ。
高橋は、夜空を眺め、しばし呆然とした。
それから1時間位、高橋は、放心状態だった。
ナオミが、電車に轢かれる光景やビルの屋上から身を投げる姿が浮かび、心が壊れそうになった。
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