3 死

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高橋は、死んだら楽になれるかも知れないと思った。 目の前に大きな柿の木があった。目立っていた。良い目印になりそうだ。 高橋は、この柿の木の下に令子を埋葬しようと思った。 もう自殺することは忘れていた。シャベルで木の傍を掘り出した。 落ち葉やゴミ、汚れた雪などを片付け、穴を掘り続けた。 時々、獣の声が聞こえた。怖かったが喰われたら喰われたで構わないと思った。 自分のような駄目人間など生きる価値が無いと思っていた。 もうどうでも良かった。 30分くらい掘ると令子が、すっぽり入るほどの穴になった。 高橋は、一息入れた。身体を動かしたせいで、寒さは気にならなくなっていた。 穴を見ていると令子の死体を納めた様子が、想像されてツーッと一筋涙が流れた。 高橋は、硬い表情でリュックから令子を取り出した。令子の顔は、見なかった。とても見られなかった。 令子の冷たく硬直した死体を穴に入れると夢中で土をかけた。 涙が、どんどん流れた。悲痛な呻き声が山に響き渡った。
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