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1 ナオミの消息
それから10年が経過した。1981年1月20日。火曜日。
高橋は、令子を埋葬した後、福島や宮城県など東北地方で暮らした。
死体遺棄という犯罪を犯したので、高木と偽名を名乗り、土木作業やパチンコ屋、風俗店などで働いた。
こういう業種は、過去の経歴に煩くなかったからだ。
3年ほど前、東京に戻って来た。
今は、スナックの雇われマスターをしている。
店の名前はマギーという。客が8名入ると満席という小さな店である。
午後4時、高橋は、アパートで目を覚ました。老朽化したアパートである。
身体がだるかった。それでも、いやいや布団から這い出した。
高橋は38歳になっていた。10年前の端正な顔は、やや崩れていた。
身体も肥ってしまいスタイルも悪くなっていた。
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