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高橋は、警戒するように相手を眺めながら「どんなことです?」と応じた。
大男は、高橋の前のカウンター席に腰掛け、ブリーフ・ケースから名刺入れを取り出し、1枚をカウンターの上に置いた。
スポット・ライトの黄色の光で名刺を読むと、「中野探偵事務所 中野 進」と印刷されていた。
高橋は、探偵に会ったことが無かった。そのせいで、やや動揺した。
中野は、高橋の動揺した様子に対し、やや困ったような表情を浮かべた。
そして、ブリーフ・ケースから写真を1枚取り出し、カウンターに置きながら、「この女性、この店によく来ていると聞いて来たんですが、住所や電話番号といった連絡先をご存知ありませんか?」と質問した。
写真を見ると母子と思われる2人が、にっこり笑って写っていた。
何かの記念に写真館で撮影したものらしい。
母と思われる女は、確かによく店に来ていた。年齢が30歳位で、なかなか色気があった。
いつも1人で来て、カウンターで飲んでいた。
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