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その女は、黙りこくって飲むばかりだった。
高橋は、無愛想だったので、それが女に都合が良かったのかも知れない。
しかし、ここ2週間、女は店に現れなかった。
高橋は、そのことを中野に話した。
中野は、やや失望の表情を面に出した。
しかし、「この辺りに住んでいたんじゃないですか?」と更に質問した。
高橋は、考えることもなく、「いや、住まいは知りません。とにかく、口数の少ない女でしたから、…」と答え、やや中野を気の毒そうに見た。
中野は、穏やか表情を消して、「男と一緒じゃなかったですか?」と尋ねた。
高橋は、少し間を置き、写真の女のことを思い出してから、「いや、1人でした。結構、色っぽい女だったけど、男はいませんでしたね。不思議と言えば不思議ですけど、…」そう答え高橋は、首を捻った。
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