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その上で、自分が何をされているのかを考えた時、自分の顔が目の前にある幼馴染の耳と同じくらい、いや、それ以上に真っ赤になっていくのをはっきりと感じた。
なぜ自分が泣いていたのかも忘れてしまうほどに激しく動揺した。
男の子が唇を離し、真っ赤になった女の子の顔を確認すると、その顔を包み込むように自分の胸に抱きしめた。
女の子の耳に、自分のものとは違う心臓の鼓動がうるさいほどに響いた。
「ねえ、ちーちゃん……」
心臓の鼓動とともに男の子の声が響く。
女の子は、自分の心臓も外に飛び出してはしまうのではないかと思うくらいにドキドキしていた。
目が回りそうなくらいクラクラした。
だが、
「ぼくらが五つのときのこと、おぼえてる?」
男の子のその一言を聞いて、女の子の混乱と動揺に支配された心は平静になっていき、心臓の鼓動は若干の動悸を残しつつも、落着きを取り戻していった。
「うん……」
女の子は頷いた。男の子の鼓動も平静になっていく。
「ちーちゃんが、こわいおじさんにつれていかれそうになって……」
「たいちゃんが、わたしを助けてくれた……」
「でも、ぼくもちーちゃんもケガして……」
「たいちゃん、泣きながらわたしにあやまってたね。ごめんね、ケガさせてごめんね、って。たいちゃんはちっとも悪くないのにね」
「うん……」
「たいちゃん、言ってくれたね。ぼくがきみを守るって。ぼくがきみの盾になるって」
「う、うん……」
「そのまま、ふたりで結婚式ゴッコしたっけ。たいちゃん、誓いますって言ってくれたね」
「そ、そこまで思い出さなくていいよ!」
「わたしも誓ったね。たいちゃんが盾になるなら、わたしは剣になるって」
「うん……」
「盾をつかわなくてもいいくらい、つよい剣になるって」
「うん」
「……ごめんね、たいちゃん」
「いいんだよ、ちーちゃん」
「どうするの?これから……」
「とにかく、アイツに見つからないように家に帰ろう。お父さん達に学校で起こったことをはなして、ケーサツをよんでもらおう。ぼくらにはゼンレイがあるから、先生がケンジとゆいをイタズラしたって言えば大丈夫だよ」
「信じてもらえるかな……?」
「信じてくれなきゃ、無理やりにひっぱってでも連れて逃げるんだ!」
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