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「はっ、ああっ。」
張り付いた喉から息が漏れ出る、腕をばたつかせても羽虫達は恐れる様子は無い。彼の体に僅かにこびりついた垢を舐め取ろうと露出した顔や手足に集る。
耐え切れずカプセルの外に転がり出ると、ぬぢゅり、と奇妙な音が彼の体の下で鳴る。水分を含んだ「何か」の上に転がり落ちたのだろう、本来床であるはずの所は一面その「何か」に覆い尽くされているようだった。
素足で踏んだ「何か」はぬるぬると滑り、まだ上手くバランスを取れない彼はうつ伏せに倒れこんでしまった。真っ先に思い出したのはバイオ区画の湿地帯である、ヌルヒダモに覆われキモススリや大型の無限蟲がうろつく不潔で気味の悪いあの場所。
怪しげな線虫や出来損ないのような小動物、泥濘にまぎれて得物を狙う眼があちらこちらに輝くあの湿地帯。バイオ区画にしかいないような不快植物や虫達が何故カプセルの周りに居るのだ!?
よろよろと立ち上がり、状況を見定めようと今度はしっかりと眼を見開く。
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