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「異人だよ」
「…………あ?なんつった?」
聞こえた言葉に男は一時停止して、顔を引き吊らせた。
「はぁ…やれやれ、耳まで遠くなったなんてね。終わりだね。もう死ぬしかないね。殺してあげるよ」
「まてまてまてまてっ!!ちょ、違くて!!…は、何?お前今、異人っつった?俺の聞き間違い?」
「そう言ったはずだけど?やっぱり………死ぬしかないね」
「ぎゃぁぁぁあ!!まてまてまてってば!取り敢えずっ取り敢えず、刀仕舞え!!」
ズサーッと凄い勢いで後退りしながら、男は必死に両手を振って刀を仕舞うように説得する。
「抜けって言ったり仕舞えって言ったり、我が儘だね。牛のくせに」
稔麿は至って平然に刀を仕舞うと、またもやれやれと首を竦めた。
「…………で。なんで異人?」
「僕が気に入ったからだよ」
一旦落ち着いて、話を戻した男に稔麿はケロッと真顔で答える。
あぁ、そうですか。と言いたくなるのを我慢して、男は話を続けた。
「そいつのどこを気に入ったんだよ。そして、そいつはどこに住んでんだぁ?」
「目だよ。あの不思議な色の目に、男と対峙したときの意思の強い目。ふふ、僕のものにしたいね」
その時のことを思い出しているのか、妖しく微笑む稔麿に男は一瞬、寒気を感じて身震いする。
「ふーん。目ねぇ…で?居場所は?」
「知らない」
「はぁっ?知らねぇ!?じゃぁ、どうやって捕まえんだよ。名前は?」
「知らない」
「はぁあっ?馬鹿か!?お前、そんなんも知らずに…」
キンッ
「ねぇ、牛ごときが僕にそんな口利いていいと思ってるの?」
一瞬にして首に宛がわれた刀に男は息を飲んで、蒼白した顔で冷や汗を流した。
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