第四章

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  「おおおおお落ち着け、落ち着け稔麿。俺が悪かった。あ、謝るから刀を仕舞え…ってくださいお願いします」 「ふんっ。次言ったら知らないから、首」 こくこくと刀が当たらなくなった首を男は無言で上下に振る。 安堵の溜め息を吐いた時、襖が開いた。 「おや、稔麿。帰ってきてたのですか?」 「まあね」 「おやおや…これはこれは…」 髪を項辺りで緩く纏めてある男は、言いながら後ろ手で襖を閉める。 笑って見える細い目で、つんとした稔麿と青ざめた男を見比べた。 「小五郎ー!俺、死ぬとこだっ…いだだだだだっ!!」 「はいはい。いつものことですね」 泣きついてくる男の短髪を引っ張って引き剥がし、小五郎は穏やかな口調で冷たくあしらう。 それを見た稔麿は嘲笑いながら、ざまあ。と呟いた。 「晋作。どうせ貴方が稔麿に暴言でも吐いたか、敵わない喧嘩でも売ったんでしょう?」 「なっ、敵わないとは何だよ!そんな俺が毎回負けてるみたいな…」 「正論でしょ」 「うっせえ!たまたまだっ!!」 晋作は、心外だ!と顔を真っ赤にして叫びながら、吊り目をますます吊り上げる。 「僕に一回も勝ったことが無いくせによく言うよ」 「はは、晋作の負けですね」 怒り叫ぶ晋作を尻目に稔麿は、馬鹿馬鹿しい。と部屋を出ていこうと立ち上がる。 そんな二人を面白可笑しく見ていた小五郎は、目尻に涙を溜めている晋作の頭をよしよしと撫でた。 「稔麿…どこいくんだよ」 「なんで僕が一々、牛に教えなきゃならないわけ?…はぁ、ただの厠だよ」 晋作の問いに振り返った稔麿はその目尻に溜まるものを見て、嘆息して出ていった。  
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