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処刑台に立つような面持ちで楓が連れてこられたのは、…予想が外れることはなく。悲しきかな新撰組屯所。
(ああ…最悪だ…)
そこで楓は、予想以上に最悪な事態が起こっていることに頭を抱えたくなった。
「あ?総司。勝手に出歩くなって行っただろうが。…で、そいつは何だ?」
目の前には不機嫌顔の土方歳三。
(ああああ、屯所にいたってことがバレてるんなら、今から拷問だよっ。斬首だよーっ!土方歳三の拷問は凄いんだよね、確か池田屋の時は…)
パニクる楓の脳内では、こんな時にばかり無駄に知識が駆け巡る。
心の中で焦りまくって冷や汗を流しまくる楓だが、表情は全く崩さずポーカーフェイスだった。
そんな楓の隣で、屯所に着くまでニコニコと笑っていた沖田からは、微かに舌打ちの音が聞こえた気がした。
「ああ、この方はですね。そこで知り合いになったんですよ。じゃぁ、そう言うことで…」
「まて。そう言うことで、じゃねぇよ。何で知り合った奴をここに連れ込もうとしてんだぁ?ここをどこだと思ってやがる」
睨みを利かせる土方に怯みもせず、沖田は明らかに面倒臭そうに続けた。
「ええーっと。この方の腕が中々のものだったんで、入隊してもらいたいなぁ…と思いまして」
「え゙」
沖田の次に口を開いたのは土方ではなく、暫く蚊帳の外になっていた楓だった。
楓は思わず出てしまった声に、慌てて口を塞ぐ。
「…おい。こいつ、明らかに今聞きました。みたいな声出したぞ」
「ははは~。きっと、気が動転してるんですよ。ちょっと僕と戦って下さい~くらいにしか行ってませんから」
「ふぇ!?」
またも出てしまった声に楓は、しまった。と顔を歪ませる。
案の定、土方は益々不審そうにこちらを睨んでいた。
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