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「総司…てめぇ何か隠してるだろ…」
「疑り深いですねぇ~。それより何か隠してるのは土方さんの方じゃないですか?」
「ああ?何だと?」
沖田は笑顔のままなのに、二人の間にはビリビリと火花が散って見える。
そんな二人をすぐ側で観望しながら、楓は考えていた。
(何故、沖田総司は私のことを隠すんだろう…?この様子だと、やはり土方歳三は私のことを知らないみたいだし…)
尋問やら何やらするのかと思えば…沖田は何故か嘘をついてまで、楓を庇っている。
話によると、どうやら試合をするために連れて来られたらしいが…しかも、入隊試験の。
思わぬところで条件合格へと一歩近付くフラグが立ったのは良いが、入隊試験となると話は別だ。
もし、万が一、受かってしまったら困る。…受かっても入隊などできないのだから。
(ええっと、この状況はどうすれば…)
庇っているといえど、沖田が何もせず素直に帰してくれるとは思えない。それに、こんなチャンスを逃すのも惜しい。
かと言って、入隊試験という肩書きでは駄目だ。…勝つ可能性、合格する可能性など無に等しいが、それでは勝つことに集中できない。
頭を押さえ込みたくなる事態だが、実際は楓がいくら悩もうとも、答えは簡単。一つしかないのだ。
結局、全て沖田次第だった。
「いいんですか?こんなところで言っちゃっても。ねぇ…豊玉さん?」
「っ!!てめえ何でそれを……!やはりお前かっ、俺のアレを盗んだのは!!」
「はて~…何のことですかねぇ~」
何も施す術がないため、成り行きに任せることにして、改めて二人を見た楓。
その目の前では、惚けて口元を吊り上げている沖田に、土方が発句のことで揺すられているところだった。
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