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それを聞いた土方はスッと目を反らして、二人に背を向けた。
「道場で試合をするだけなら許可をやる。入隊試験とはまた別だ」
「ありがとうございます。土方さんっ」
態とらしく満面の笑顔で礼を言う沖田に土方は舌打ちをすると、屯所の中へ入っていった。
「総司、後で話があるからな」
沖田にとって不吉な台詞を残して。
「はぁ…後から大変そうですねぇー…」
いなくなった土方がいた場所を見て、沖田は溜め息混じりに、ぽつりと呟く。
そんな沖田の横では楓が密かにガッツポーズをしていた。
(ありがとう土方歳三っ!入隊試験が無くなったぁ!!)
睨まれて恐い思いを我慢した甲斐があったというものだ。…多少なりとも。
これで心置き無く戦える。
「さて、行きましょうか。聞きたいことがたくさんありますし…ね、貴方もでしょう?」
「…………」
ニヤリと笑って歩き出した沖田の後に楓は無言で続く。
そう、聞きたいことはたくさんあるのだ…
――――……
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